「村長室から」(令和7年度施政方針)
村長室から 「令和7年度施政方針」 栄村長 宮川 幹雄
21世紀も四半世紀となる2025年を迎えました。科学技術は飛躍的に伸び、スマートフォンが人間と一体化したように思われる時代となりましたが、キャッシュレスの環境への戸惑いなど、時の変化に懸命に対応せざるを得ない事態が人類の進歩なのかと疑問に思うところでもあります。又温暖化によるといわれる気候の変動は、人間が肌で感じる段階となって、集中豪雨などの大規模な自然災害を頻繁に引き起こしています。さらに、東京直下型や南海トラフなどの巨大地震への不安も一層高まっています。インフラは老朽化し、子どもの数は減少の一途、高齢者を支える社会制度は誠に厳しい状態です。人類の調和という観点からは、国同士の武力行使が止まらず、政治の分断と混乱が続いています。私たちを取り囲む様々な環境は、想像以上の規模とスピードで変化していることを認識しなければなりませんが、そうした意識を持って、栄村の人口減少をはじめとする様々な課題から村民の「暮らし」を守り、「穏やかな社会」を持続していく取組を一層推進していきます。以下六つの方針を掲げ、その思いを述べさせていただきます。
一つ目は「しっかりとした行財政基盤を確立」することです。健全な財政運営と安定した行政運営は村政執行の要です。時々の大型事業への対応や予期せぬ災害時等々において、財調基金や目的基金が賢く財源調整機能を発揮できる土台を築きます。歳入は地方交付税が主たるものですが、過疎債・辺地債・緊事債等の有利債を効率的に活用し、インフラ維持等のための国県補助事業や制度資金の導入を積極的に図ります。
二つ目は「人口減少対策」です。残念ながら、誕生と死亡の差である、自然動態は増加に転じることは難しいが、転入と転出の差である社会動態は増加傾向にあります。令和6年は年間で22人転入が転出を上回りました。都会とは違う暮らしへの憧れや自然の中での少人数教育の魅力、積極的な子育て支援、空き家対策、移住対策チームの努力などが確実に成果に結びついてきています。移住セミナーへの参加や空き家情報をさらに充実して、社会動態の増加に向けて取組を強化します。そして移住者の皆さんと発展的な関係を醸成していく中で、多様でありながらも穏やかな村づくりを進めます。
三つ目は「健康と福祉」です。「子育て支援センター」は出産から子育てを始める家族の支えとして、「包括支援センター」は、適切な介護支援や健康な暮らしを続けるための相談役として、その役割は極めて重要で信頼感をさらに高めていかなければなりません。小赤沢の生きがいセンターは、診療所と連携し、高齢者の憩いの場、地域の拠り所として存在価値を高め維持継続を図ります。そして「互いに認め合い、支え合い、幸せに暮らす地域社会」を理念として、村全体で活発な保健事業や介護予防の取り組みを推進し、生涯を健康で寿命を全うできる栄村をめざします。
四つ目として「村土の強靱化」です。地震や水害・豪雪などを念頭に、国県に要請すべきこと、村が取り組むべき事を明確にして災害に強い村づくりを進めます。国道405号の改良促進、未供用区間開設の要望強化、鳥甲線改良計画の推進、長瀬横倉停線改良の継続、信濃川水系緊急プロジェクトの事業推進、除雪力の強化、それから森林組合と協力して、電線等ライフライン確保と里山の計画的整備に力を注ぎます。また小赤沢給油所は地域の皆さんの暮らしや災害時を考える時に、秋山地域に無くてはならない重要なインフラとして、その存在が継続できるよう支援をします。
五つ目は「新農村社会の構築」であります。各農業集団の連携と法人化を進め、農業だけでなく毎日の暮らしにも直結する集落活動が展開できる集団・集落の形成をめざします。その為にも基幹である米作りを安定して継続できるように、栄村式直払い制度である現在の作付面積に対する補助を10アール5000円から、7000円に増額して、農家の作付け意欲の向上と農地の維持を図ります。さらにトマトやアスパラ、ズッキーニといった畑作、又300頭を超える肉牛の生産などは、栄村農業の基幹として、若い皆さんが、栄村で農業を続けていく、農地を守っていく事ができる施策の取り組みを進めます。
六つ目は「栄村観光を変える」こと。千曲川沿いの、宿泊施設、スキー場、物産館は連携協力して、実戦的な観光戦略やコーディネートを担うことのできる体制をつくります。それには、地域おこし協力隊の導入や特定地域づくり事業協働組合も視野に入れて臨む事が必要と思っています。秋山郷は温泉と山岳観光だが、江戸時代の暮らしやジオパークを意識した秋山郷特有の個性の強調も大事と思います。雄川閣は行政の枠内でなく、民間に委ねて、切明という環境・景観が充分に活用され、栄村観光、秋山郷観光に良い変化をもたらす姿で生まれ変わってほしいと考えるところです。いずれしても、様々な提案から議論を深め、あるべき姿を見いだしたいと考えています。それから、村の中に食事処が少ないという声を多く聞きます。風土感があって、観光につながる食事処として、そば屋さん、天ぷら屋さん、ステーキ屋さん、茶飲み場所などを含め、村として積極的に開業支援に取り組み、人の動きを賑やかにしたいと思います。村直営のスキー場は大雪の中、深雪を求めて、多くの人が訪れ活気が感じられます。又運営を一般会計にしたことでリフトの原動機や圧雪車の更新が過疎債にて財源確保できることで、経営の継続に自信が持てるようになりました。スキー場が村のイメージアップと子どもたちの誇りにつながる取組を進めます。教育部門においては、本年度から義務教育学校設置に向けて、小学校校舎が改築工事に入ります。栄村の新たな教育体制に大きな希望を持って、開校までの準備が遺憾なく進むことを願っています。子ども達が新教育体制の元で、伸び伸びと育ち、自信と誇りを持って、社会で活躍できることを信じて、子育て支援への加速と栄村教育の充実に努めて参ります。
それではこれから、令和7年度当初予算について申し上げます。
一般会計の総額は、38億8千400万円としました。前年度比で4億7千400万円、13.9%の増額となります。
特別会計は、7会計の合計で8億9千584万3千円、前年度比△481万7千円、0.5%の減額となります。
従いまして一般会計と特別会計の合計では、47億7千984万3千円、前年度比4億6千918万3千円、10.9%の増額となります。
公営企業会計の簡易水道事業、下水道事業の2会計への負担金・補助金の合計額は1億210万8千円、前年度比824万9千円、8.8%の増額であります。
一般会計の予算が前年比4億7千万円余り増えているのは、小中統合義務教育学校整備事業にかかる経費、4億2千700万円が増額の主たる要因であります。
歳入予算でございますが、村税につきましては令和6年度実施された定額減税の影響のため、個人所得割額の増額となり、前年度比574万円増額の1億6千914万円を。森林環境譲与税は徴収する制度が始まりましたので、前年度比400万円、25.0%増額の2千万円を。地方交付税は、令和6年度決算見込み及び国の地方財政対策の推移などを考慮して、前年度比6千200万円、3.7%増額の17億5千200万円を。繰入金につきましては、教育基金1億円を含め、前年度比7千650万円、28.8%増額の3億4千189万9千円を、計上しました。
村債につきましては、過疎債を活用してのスキー場リフト更新、義務教育学校整備事業等により、8千930万円の増額。辺地債は事業費増により、2千390万円の増額。また、単独の道路改良工事では緊急自然災害防止対策事業債で8千490万円を見込み、合計では26.4%増額の5億9千710万円を見込みました。
次に、歳出予算の概要について主な事業を申し上げます。
新規では高齢者総合福祉センターの屋根改修工事で4千930万円余りを計上しました。子育て家庭を支援するため、保育料の無料化と、学校給食の無料化を実施します。保健衛生費で予防対策経費として帯状疱疹に対する予防接種を新たに行います。
次に目的別の予算額の割合では、土木費が最も多く、道路メンテナンス事業、緊急自然災害防止対策事業の2つの大きな事業で、6億6千623万3千円を。ついで、教育費で学校整備費を含めて6億2千470万6千円を計上しました。
性質別では、道路メンテナンス事業、橋梁修繕工事、橋梁トンネル点検等の実施で、維持補修費が8千万円の増額。普通建設事業費が3億4千万円の増額となりました。公債費は7千400万円の減額です。
款ごとに説明をいたします。
2款総務費ですが、各集落が円滑な集落運営活動を行うことができるように、引き続き支援交付金として680万円を配分します。また暮らしの便利帳を作成する費用として47万円余りを計上し、各戸へ配布いたします。役場庁舎を維持管理する経費として3千480万円を。東京都武蔵村山市や横浜栄区との都市交流事業経費で140万円。宝くじ助成金を財源としたコミュニティ助成事業費として500万円。新規として、各家庭の家庭用照明器具をLEDに交換する経費補助として250万円を計上し、省エネ環境を整備します。また特定地域づくり事業協同組合の事業検討のため35万円を計上し、この事業の推進を図ることとします。
凶悪事件の防犯対策として、村内に新たに防犯カメラ3基設置、さらに住民の防犯意識向上等の観点から、家庭用防犯カメラ設置等にかかる経費の補助を行います。
移住定住施策については、今年度も640万円を計上し引き続き、更なる移住者の確保に努めて参ります。
3款民生費です。
高齢者福祉では、保健師などによる訪問活動を充実するなど、健康不安の解消と介護予防や生活支援に力を入れる各種サービス事業を実施して参ります。
社会福祉協議会への介護サービス提供等の経費として1千210万円補助をし、高齢者総合福祉センターでのデイサービス事業や訪問介護事業が不安なくすすめられるよう行います。交通補助として新規に村から飯山赤十字病院間の福祉バスの試行運転経費として180万円を計上しました。高齢者福祉費では公費負担分の後期高齢者医療保険給付費他で5千280万円。障害者福祉費では自立支援給付費他で5千420万円。介護福祉費では在宅介護に必要な福祉サービスを提供する経費他で1億870万円。高齢者が冬期でも安心して暮らせるための雪害対策経費として3千410万円を計上しました。
4款衛生費です。
生活環境の整備では、ごみ処理業務、火葬業務など、津南地域衛生施設組合の組合費、4,150万円を。妊娠期から出産、子育て期まで切れ目なく、母子に関することや子育てに関する補助、助言、相談対応などの支援を行ってまいります。母子保健事業、310万円。住民対象の各種検診事業で770万円を計上しました。
6款農林水産業費です。
農業・畜産業につきましては、農業用施設の計画的な維持管理と整備を進めるとともに、農業生産活動を継続するための支援金の交付、米農家支援や優良米生産支援などを継続して実施してまいります。
米農家支援事業として水稲の作付け面積に対する補助を一反歩5千円から7千円に引き上げました。新規では畜産振興費で飼料高騰対策支援交付金として100万円。継続事業として中山間地域直接支払い交付金で5,040万円。多面的機能支払い交付金で1,820万円。原材料支給事業で460万円。鳥獣対策費として690万円。県営中山間整備事業負担金で600万円を計上しました。栄村の農業を守る施策に全力で取り組みます。
林業振興費は、森林整備に必要な林道の維持補修に努めるとともにライフライン保全対策事業として1,560万円。みんなで支える里山整備事業、住居周辺境の除伐等で2,190万円。栄村森林組合が事業主体で購入する林業機械フェラバンチャーに補助金として、270万円をそれぞれ計上しました。
林道費では五宝木トンネル改修工事で1,050万円。地籍調査費では令和6年1月発生の能登半島地震により地殻変動があったため、座標補正等を行う経費で1,840万円を、それぞれ計上しました。
7款商工費です。
商工振興経費として商工業者への経営支援に取り組む経費として340万円。新規起業支援として、600万円。道の駅管理経費では通常の委託料費の他、地域おこし協力隊員を配置する経費として1,260万円、加工センター管理費では光熱水費及びボイラーの修繕費用他で660万円。
観光宣伝経費ではパンフレット作製費他で1,200万円。栄村秋山郷観光協会補助金として750万円を計上しましたが、当団体の今後の体制について、引き続き協議を進めていきます。
観光施設維持管理経費で1,440万円。施設修繕費490万円。温泉管布設替え工事で500万円。温泉宿泊施設指定管理委託料で2,670万円。村有の観光関連施設につきましては、指定管理制度の活用と運営委託などにより効率的な運営を図っていきながら、今後さらなる検討をします。
交通対策では、デマンドバス運行委託 2,570万円。路線バス運行経費の支援 560万円。JR簡易委託駅運営事業 760万円。公共交通の確保にむけて継続して実施いたします。
令和6年度から一般会計へ移行したスキー場にかかる経費です。一般管理経費として3,440万円。これには人件費、光熱水費等が含まれます。ゲレンデ管理経費として2億2,010万円。これにはリフトの原動機交換1億5,400万円、冬季従業員の報酬1,920万円が含まれます。レストラン管理経費では900万円。食材費等が含まれます。スキー場管理費として合計2億6,360万円となります。過疎債、使用料等を充当し一般財源は7,750万円となります。
8款土木費です。
道路ネットワークの整備は、村道屋敷線改良に伴う工事費他を計上するほか、緊急自然災害防止対策事業債を活用して、天代原向線、苗場線の災害防止対策に取組みます。鳥甲線は用地調査を開始します。
道路メンテナンス事業では横倉沢橋修繕、平滝跨線橋修繕、橋梁トンネル一斉点検等で、1億9,800万円。村道修繕工事等で6,530万円。 道路除雪費では2億6,290万円。道路除雪に必要なロータリー除雪車1台の更新を行い除雪能力の強化を図ります。住宅管理費では村内80戸余りの公営住宅の維持管理経費等で4,990万円。空き家対策、若者マイホーム支援事業等で1,100万円をそれぞれ計上しました。
また長野県が進める信濃川水系緊急治水対策プロジェクト事業への支援を講じていきます。
9款消防費です。
住民の生命と財産を守る施策となります。消防体制の強化としまして、常備消防は岳北広域行政組合負担金として8,940万円。非常備消防は団員の負担軽減、活動に必要な装備などの充実を図ることを目的に、体制強化を図ってまいります。消防団活動経費で2,250万円。防災対策経費として2,650万円。この中には長野県防災行政無線の更新経費が含まれます。
10款教育費です。
児童生徒の通学送迎経費として1,000万円。小中統合義務教育学校整備費として4億2,740万円。小学校管理経費として人件費、光熱水費、システム借上げ料他で1,870万円。小学校教育振興費では国のGIGAスクール構想の推進により、端末の更新経費として500万円。中学校管理費として7年度は小学校と同じ校舎になるため光熱水費等を見込み1,960万円。中学校教育振興費でも同じく、端末の更新に、200万円を計上しました。今年度から給食費の無償化に取組みます。その経費として700万円を計上し、保護者の負担を軽減します。文化会館管理経費で510万円。照明のLED化を図り電気料金の軽減を図ります。津南町と連携した苗場山麓ジオパークを活用した学習活動や地域振興など負担金で820万円。歴史を学び、文化を育むための、公民館活動経費790万円。文化財保護経費540万円。その他の経費を計上しました。
次に、特別会計予算及び公営企業会計予算につきましては、それぞれ、所要の歳入歳出予算を計上しております。
最後に、議員各位をはじめ、村民の皆様には、今後とも深いご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げて、令和7年度の施政方針とさせていただきます。
令和7年3月4日